前に戻るトップページ

植物に関係した技術情報

ここでは、皆さんにプリザーブドフラワーを作るときに役に立つ情報を載せていきたいと思います。


水切り:切り花に付き物のような言葉ですね。このページをご覧の方々は何をするかは解ると思いますが、 ではなぜ水の中でないといけないか解って作業しておられるでしょうか?

花は茎から水を吸いますね。ということは水の通り道があるわけです(導管という)。これは裸眼では見えないくらい細いので空気自体が栓となって入口をふさいでしますのです。 したがって、いくら切れるハサミで切っても空中で切ってから水に入れると空気の栓が邪魔をして水が揚がりにくくなります。そのため水の中で切り切り口に空気が触れないように するのです。ということは、水切りしてから桶や花瓶に移すまでに切り口が乾かないよう早めに移すことも重要になってくることがわかりますね。



湯揚げ:この言葉も聞いたことはあると思います。これは図で説明します。湯揚げは高温のお湯で切り口の殺菌をするとか切り口をふやけさせる 為と思っている方も多いと思いますが、間違いではありません。ただし、それだけなら水切りより水が確実によくあがる説明がつきませんね。図のように高温のお湯で切り口付近に 真空状態を作って急激に水を吸い上げさせるのです。化学というより物理的な原理ですね。理屈が解っていればどのくらいの時間お湯に浸けていればよいかもわかって来ます。泡の 出が少なくなるまで浸ければいいのです。



前に戻る

花はどのように水を吸い上げるか
 これは花が水を吸い上げる様子のイメージです。
 茎内部の導管は細長い細胞で水を吸い上げやすい形状になっています。といっても有限長ですから水に接触した細胞から次の (上部の)細胞に水を伝えなければなりません。このときうまく利用されているのが浸透という作用です。浸透というのは濃度(比重)の違った 溶液を半透膜で仕切ると濃度の高いほうの溶液が薄まる方向に溶液が流れる(逆流はしない)という作用です。植物の場合で考えると 細胞は周りを細胞膜で仕切られています。この膜が半透膜の役目をし、先端の方(つまり花や葉)で水分が蒸発したり(特に葉は表面に 気孔という大きさを変えられる穴があり発散する水分を調節しており、この作用を蒸散と呼んでいる)、光合成などの化学変化などで水分が減っ たり蒸散で水分が減ると、これらの細胞内の溶液の比重は高まります。左の図では四角いはずの細胞の上下がへこんでいますね(これは分かり易 いようにイメージしたもので、実際は細胞は上下左右にくっついているので縮むような感じと思われます)。このように内部の水分が減り、水に入 れないで放っておくとしおれて最後には枯れてしまいます。茎を水に浸けると水は水分の少なくなっている葉や花の方に浸透していきます。そして、 最後には水が満たされ、花は見た目にもシャキッとし、水が揚がった状態になります。
 この時、吸った水はまだ茎の切り口付近にいますから吸った水が花の先端まで達するにはちょっと時間がかかることが理解できます。花を 茎から染料を吸わせて染める場合など、あらかじめ花を少しだけ乾かしてから作業したほうが短時間に染まると考えられます。
 気温が高い時など、水を吸い上げるより蒸散の方が大きくなると、花を水に挿しているにもかかわらず花はしおれて最後には枯れてしまいます。 可能性があるのは、日の差す場所に花を置いた場合(蒸散が激しい時)や、水が汚れていたり切り口がつぶれていたり汚れた場合(水を吸い上げ にくい状態の時)です。夏に花を染めるときは花全体をセロハンで包んで中の湿度を上げ蒸散を減らすようにし涼しい場所に置くのもよい方法だ と思います。(セロハンに水滴がたくさん付く様ならいくつか穴をあけたほうがよいでしょう。)

細胞について : 細胞の話が出たついでにもう少し説明したいと思います。

細胞は、分子が化学物質での最小の粒子である様に、植物(生物)の最小単位です。
細胞を包んでいる細胞膜の厚さは植物のかたさと関係あり、年数が経った草花の茎や樹木がかたいのは細胞膜や細胞壁が厚いためです。また、細胞膜は 植物が死んでも残ります。葉の細胞膜は薄く柔らかく周りを細胞壁で囲まれていてます。細胞壁は水が切れても縮まないので花や葉では水切れの 時、原形質分離という細胞膜と細胞壁が分離してしまう現象がおこることがあります。原形質分離しても再び水を与えれば元に戻ります。
 プリザーブドフラワーを作るときA液で脱水した時、A液は細胞膜を通って細胞内に入り込み色素体や葉緑素などを壊すので脱色され浸透圧も 水より高くなり花が硬くなると思われます。また、アルコールはタンパク質に反応して一部のタンパク質も固まると思われます。
 蒸散についてもう少し説明しておきます。蒸散はどのように起こっているかというと、細胞の表面から水分が蒸発し水蒸気となり、これが 葉の主に裏面にある気孔という穴から外に出て行くのです。気孔というのは細胞壁の厚みが内側と外側で違う細胞(孔辺細胞)が集って厚い方の 面で囲まれた部分が気孔になっています。そうすると、細胞が水分を吸い膨らむと細胞壁の厚い気孔側は外側に比べ伸びることが出来ないので湾曲し、 孔辺細胞が集まっているところ(つまり気孔のところ)に穴が空くのです。当然、細胞内の圧力が減ると気孔は閉じます。ほとんどの植物で、 気孔のほとんどが葉の裏側にあり、表面は逆に水の蒸発を抑えるようになっている。気孔の数はすごく多く、1平方cm当たり10万個もあります。葉っぱ一枚で数100万個 もあるのです。驚きですね。


前に戻る

葉はなぜ黄色くなるのか:葉っぱが黄色くなるというとイチョウが有名ですね。外にあった鉢植えを室内に入れた時に葉が黄色くなってしまった 経験もあるのではないでしょうか。では、なぜ?って言われても答えられる人は少ないと思います。基本的に黄色くなった葉はそのうち枯れて落ちてしまいます。 葉が黄色くなるのは、環境が悪くなってくると今まで通りに光合成で栄養が取れなくなるので、自分の体を身軽にしよう(葉を落とそう)として葉の付け根に仕切り を作り始め、イチョウなどでは葉が緑に見える要因の葉の葉緑素(クロロフィル)が壊れるため、元々葉の中にあった黄色の色素(カロチノイド)で葉が黄色く見え るようになるのです。その後、当然、葉緑素がなくなった光合成が出来ない葉っぱは枯れ落ちてしまいます。
 また、種や実を付ける植物は受粉のあと種(実)をつけるために葉で作られた栄養分がどんどん運ばれるようになるため、栄養を作るのが追いつかなくなると葉の細胞そのものの成分が 分解され始め葉が枯れていく(黄ばんでいく)こともあります。


葉の色に近い染料の試作品が出来たので試してみました。03/11/22


花は何で水が必要か : 育つために必要なんだよと言えばそれまでなんですが、人間なら体中水分だし、栄養などを送っている血液がほとんど水分で 汚れれば尿で排出もされるし、暑ければ体温を下げようと汗で出るし、なんとなく水の使われ方は解ると思いますが、花は水を根から(切花なら茎の切り口から)吸い上げてからどのよう に使われるのでしょうか?
 大きく分ければ、養分を作るためと、暑いときに温度を下げるためで人間と似ていますね。(^。^) 違いは人間の主食がご飯とすると植物では2酸化炭素と水で、水そのものがエネルギー源 として使われるということでしょうか。そして、おかずは地中のチッソ、リン、カリですかね。
 ではその植物にとっての主食の水はどのようにして栄養にかわるのでしょうか?葉緑素って知ってますよね。葉っぱの中にあって緑色で太陽の光から光合成でデンプンを作るような話を 小学校か中学校のとき習ったと思います。そうなんです、植物の栄養は光合成で作られ、この時、空気中の2酸化炭素と水の成分の水素が使われ、残った酸素は排出されるのです。(葉緑素は 人間では臓器ですかね。)そのため植物が生きていくには水は絶対必要なのです。ちなみに葉で作られた栄養(糖)は主に夜間、茎の方に戻って実や根や茎そのものだったり、 体の一部に蓄えられます。(リンゴの実だとかジャガイモなどの部分)。


今後も役立つ情報があれば載せて行きますのでお楽しみに。

とこよだ花店 常世田和夫



このホームページの関する著作権は、とこよだ花店にあります。一部または、全部を無断で転用、複製することは固くお断り致します。